「・・・きて。・・・ぶ?・・レル!」
「起きて、ねえ、大丈夫?ラムレル!ラムレル!」
リリの声に目を覚まし気が付くと、ラムレルは赤い絨毯の部屋で倒れていた。そして、それを心配そうに見つめるリリとキルト。呆れ顔のヴァイスが傍にいた。
「ごめん、大丈夫。みんな、ありがとう。」
そう言ってラムレルは起き上がった。
コツコツコツ。奥の廊下から足音が聞こえてきた。
「ようこそ、ラムレル様 御一行様。お待ちしておりました。」
廊下の暗がりから男の声がそういった。顔は見えないが、きちっとした襟付きの白シャツに蝶ネクタイ黒いベストにサロンを巻いていた。
「あの、ここは何処ですか??」
リリの質問に彼は紳士に応える。
「ここは完全予約制 月灯りのレストランです。本日ご予約のラムレル様お待ちしておりました。私はギャルソンでございます。どうぞ何なりとお申し付けください。では、お席へご案内致します。ささ、どうぞこちらへ。」
身振り手振りも大げさに、早口でギャルソンと名乗った男は姿を現した。
まるで人間の胴体に丸いゴムボールをのせたように彼の頭部は青白く光を発する真ん丸な満月だった。
「如何なさいましたか、ラムレル様?何かお困りでしょうか」
ギャルソンは傍まで歩み寄ると丁寧に話しかけてきた。
リリはラムレルの耳もとで
「ダメよ!絶対に言ったらだめよ!!」
「うん、わかってるよ。」
ラムレルはギャルソンの顔を見上げ
「大丈夫です。お願いします。」
「かしこまりました。では、どうぞこちらへ」
手を指し、丁寧な案内と同時に歩き始めた一行だったが廊下に差し掛かった辺りでギャルソンはクルリと振り返り制した。
「おっと、失礼。ここから先はご予約のラムレル様のみご案内でございます。お連れの皆様はお生憎でございますがこちらでお待ちください。」
「ちょっと、なによ!私たちは席にもつかせてもらえないの!!」
そう言ったリリにギャルソンはスっと顔を近づけて
「お生憎でございます。完全予約制です!!!」
少しドスの効いた怖い声だった。表情が読めないぶん余計に怖さが増したようにリリは感じた。
「なによ!ここで突っ立てろなんて、ひどいわ!」
「そうではございません」
ギャルソンは指をパチンと鳴らした。
「あちらでどうぞ喉の渇きと優雅なお時間をお過ごし下さい。軽食もございます。」
リリ達はギャルソンの手が指す方を見ると、さっきまで小さな絵の額縁が飾られた壁が消えBARルームが現れた。
「それでは、ラムレル様」
ギャルソンとラムレルは廊下へと消えていった。
リリは心配そうにラムレルの後ろ姿を見つめていた。