「ちっ!バカがっ!!!!」
その怒号を放ったのはチェルシーだった。その直後に大きな爆発音が城中に響いた。
ズドン!!と床が揺れ、爆風が舞った。
広間に白い煙が立ち込め、カタカタと内装の何かが崩れ落ちる音が聞こえた。
爆発した部屋の中央には剣を振り上げたアデモに代わりにライオンの化物が立っていた。
しなやかな後ろ足で立ち、大木のような筋肉質の上腕筋、岩のような拳、りりしく威圧感のあるライオンの顔。その頭上には王冠と背中には小さなマントが揺れていた。
ライオンは辺りを見回す。
その右手側には額にナイフがささったモリカが倒れていた。
左手側の先に少年と部屋の壁まで吹っ飛ばされたアデモ。
そして後ろにはキルト。
ん!?少年?
ライオンは星降り人がいつの間にか移動していることに驚いた。
その彼が天井を指差し「あそこだ!!」と叫んだ。
ライオンは上を見上げるとシャンデリアの陰に黒い影を見つけた。
影はバサバサと羽を広げ、頭上を回ると天窓のガラスを破り逃げていった。
ライオンは叫ぶ
「シフォン!追え!!」
緑猫のシフォンは床を蹴り、壁蹴り、宙を舞うとまるで龍のようににょろりと胴体を伸ばしその影を追いかけていった。
家臣たちの咳や安否を確かめる声がざわざわと聞こえ出した。
十何人と城の重鎮がいる広間で起きた事件だったが、一連の流れを正確にとらえることが出来たのは、チェルシー、ビザ、ウォマス、そして星降り人の少年だけだった。
ライオンは星降り人の少年を睨んでいた。