翌朝、ポルトを森の出口まで見送りまた明日と約束をしました。
ジジルは友との約束が嬉しくてせっせと杖を作りました。
次の日、ポルトは背負ったリュックに沢山の食べ物を詰め込んで
ジジルのもとへと戻りました。
「ポルトこんなに沢山もどうしたんじゃ??」
「ジジルさん、これは俺と契約してくれたお礼だ。商売は信用が一番ってな。遠慮なく受け取ってくれよ。」
「ジジジ、みてみよ。こんなに美味しそうなもんが沢山。嬉しいのぉ」
ジジジとジジルは手を繋いで踊り喜びました。
「少しはりきっての、杖が3本作れたど。みな持っていけ」
「ジジルさん本当か!たった1日で3本も。有難う!」
「最初は難しいかもしれん。すぐに売ろうと無理はするなよ。」
「大丈夫だ。ジジルさんのこの素晴らしい杖は売らないほうが難しいくらいだぜ。また沢山の食材を持ってくるから楽しみに待っててくれ!」
ポルトは笑顔をみせると受け取った杖を束ねて背負いました。
「ああ、いつまでも待っとるからの。」
ジジルはポルトが帰るのを名残惜しそうに見送りました。
ポルトが持ってきた食料はどれも初めて口にする美味しいものばかりでした。ジジジもはちみつをたっぷり塗ったパンが気に入ったようで、口いっぱいにほおばって食べました。
ジジルはそれを見ながらクスクスと笑い、またせっせと杖を作りました。
あれから半月ほどたった日の夕方。ポルトはジジルのもとへと現れました。
「おお!ポルト!会いたかったぞ」
「ジジルさん!元気そうでよかった!」
二人は手をぎゅっと繋いで久しぶりの再会を喜びあいました。
「今日は泊まっていけるのか」
「ああ、もちろん!ジジルさん話したいことが山ほどあるぜ!」
「そうかそうか、さあ疲れただろう。中へお入り」
ジジルとジジジ、ポルトは焚火を囲みお酒を飲みながら楽しい時間を過ごしました。
「早速だがジジルさん、あんたの杖。凄い大金で売れた!」
「おお!本当か!良かったな、ポルト」
「ああ、そこで持ちきれないほどの沢山の食料をこの※魔法袋を買って詰め込んできた」
※魔法袋とは沢山の物を詰め込める不思議な袋。馬車1台分くらいの積み荷を入れることが出来る。
袋から出すといくつかの木箱に食料や衣服それから食器、便利そうな工具も入っていました。
それはポルトなりの気遣いが感じられるものでした。
「またこんなに沢山。有難う」
ジジルは目に涙を浮かべて喜びました。
「ジジルさん。こちらこそだよ。俺もしっかり儲けさせてもらったよ。だから、これからのことも相談させてほしい」
ポルトはジジルの肩をポンと叩きました。
そして二人は座り酒を酌み交わしながら、ジジルはポルトの話を嬉しそうに聞いていました。
ポルトは杖が高く売れるように海の見える大きな港町まで向かいました。市場に出店料を払い敷物をひくと3本の杖を並べた。そして行きかう沢山の人々にむけて杖を得意げに話しだしました。
ジジルの魔法がかった不思議な杖は人々を驚かせ魅了しました。
ポルトのお店は人だかりで囲まれ、まるでオークションのように次々と値段が上がりあっという間に売り切れました。
買えなかったお客さんから次の販売はいつかと尋ねられることもあったとポルトは嬉しそうに話しました。
「そこでジジルさん、今度はこれを使って新しい杖は作れないだろうか?」
ポルトは腰にぶら下げた袋からキラキラと輝く鉱石を取り出しました。
「ほう、これは?」
「この赤いのは溶岩石、あと白いのは永久凍土の氷結晶、それと黄色いのは雷雲石だな」
「どれどれ、これは面白い鉱石だな」
「なあジジルさん。杖と言えば魔法使いだろ。これで魔法使いが欲しがるような沢山魔力が詰まった杖は作れないだろうか」
「なるほど、なんか出来そうなきがするの。試しにやってみるか」
「そうこなくちゃ!また楽しくなってきたな!」
こうして、ジジルは炎の杖や氷の杖など新しい杖をポルトのアイデアとともに次々と産み出していきました。
ジジルの作る魔法の杖はどれも高性能でそのうえデザイン性も高く、「正体不明のアーティストが手掛ける魔法の杖」といったうたい文句でブランドの価値はどんどん上がっていくのでした。
ジジルの手掛ける杖の評判は世界中に広がり、それを独占して販売するポルトの商売は大成功です。
そして、ポルトは念願のお店を出すことができました。