魔法の村 「ルビーエ」
ソロモン大陸の北西に百獣の王と呼ばれる王様が統治する大国「チェルシー王国」。
その西に広がる大きな森が「深い眠りの森」。
そこには巨大な精霊が宿る大木と沢山の宝が隠されていると言い伝えられているが、鬱蒼と広がる深い森は日中も日の光が射すことなく暗い闇が広がっていた。そしてコンパスをも狂わす不思議な力によって一度入れば二度と帰れなくなる。また、恐ろしい獣が侵入者に容赦なく襲い掛かると恐れられていた。
そんな恐ろしい森の奥にひっそりと暮らす一族の小さな村があった。
この村の住人はかつて魔法使いと呼ばれる特殊な一族だった。
生まれつき魔力を持ち、呪文を唱えると火や氷、風に水を操るなど不思議な力を持っていた。そして優れた者は妖精と心を通わせる才を持ち、しばし人と妖精の国とを結ぶ橋渡しの役目をはたしていた。
しかし数百年前に起きた大戦争の後、この一族は忽然と姿を消し歴史の表舞台から消え去り、今では魔法使いの存在はおとぎ話のように語られる程になっていた。
その原因は全て古の英雄と一族の間に交わされた密約だった。
過ちの贖罪。大戦において重罪を犯した魔道師一族は命の保証と引き換えに全てを国に捧げることとなり深い森の奥へと幽閉された。
あれから数百年の歳月がたった今でも魔法の村は多くの掟という鎖に繋がれ生き続けていた。それはとても厳かに慎ましく穏やかな生活だった。
森の中で自然と調和する暮らしを続ける彼ら。
世襲から隔離されたこの従順な一族であったが1つ大きな悩みと焦りがあった。
それが上級魔道師の排出。
定期的にこの村は古代魔術などの上級魔法を扱えるほどの実力者、つまりは優秀な人材をチェルシー王国へ仕えさせる決まりがあったが50年以上それだけの才能をもった能力者を育成できずにいた。
現在、城に仕える専従者が70歳を越え次の担い手を育成出来ていない事が問題視されているのである。しかしながら育成と言っても魔法というものは教わるものは僅かで、恵まれた能力というものは持って生まれた才が重要視されているため全ては神の気まぐれと言えた。
才能や成長幅という目に見えないものを計測する方法がこの村にはあった。
村で生まれた子が3282日を迎えた夜に行う儀式、魔晶初めの儀。
その体に宿る魔力を水晶に反応させることで才能が映し出され、光の強さでその器の大きさを測ることができた。
この小さな村で生きていく一生の人生進路がこの一瞬で決まると言っても過言ではない重要な仕来りだった