月灯りのレストラン
岩肌の険しい山を登り、山頂へたどり着くとまた空に昇るような長い螺旋の階段が続いていた。
記憶を失った少年ラムレルと仲間たちはその空へと続く階段を登っていた。
強風に煽られ、寒さに耐え、さらに踏み外すと地上に真っ逆さまと落ちてしまう、そんな恐怖と過酷な状況に耐えながら一歩、また一歩上へ進んでいった。
この先にあるのは天空のレストラン。
このレストランに行けば失った記憶の手がかりが見つかると言われていた。
彼らはそのわずかな情報を頼りに望みをかけて挑んでいた。
そして、ラムレルの小さな手には1枚のチケットが握られていた。
「月灯りのレストラン 招待券」
麓の小さな町で見つけた古い骨董屋。そこで手に入れたこのチケットはレストランの扉を開くのに必要なものだった。
彼らは何時間も登り続け、やっとの思いで螺旋の頂上にたどり着いた。
山を登り、階段を登り終えた頃にはもう夜は更けていた。
頂上には小さな祭壇があった。
不思議とこの辺りは何かに覆われているかのように風も寒さも感じなかった。
ラムレルはその祭壇に握りしめていたチケットを置いた。
すると、祭壇に天空から一筋の光が差し込んできた。
まるでスポットライトに照らされたように祭壇は眩しい光に包まれた。
光の粒がキラキラと宙に浮きあがり置いたチケットもふわふわと舞い上がった。
そして、チケットに記載されていた文字が一部消えて、また新たにこう書き足された。
「ようこそ月灯りのレストランへ ラムレル様 御一行様」
ラムレルは驚いた顔で振り向き仲間たちを見渡すと、やっぱりみんなも同じような顔をしていた。そして、息を飲み頷くとラムレルはもう一度手を伸ばし、チケットに触れた。
すると空から差し込む光はどんどんと明るさを増していき強烈すぎて視界は真っ白になってしまった。