星を作る工場 ③

~ 星の妖精たち ~

ある日のこと。

星の妖精たちは大きなトンカチで流れ星の通るレールを修理していました。

 

トンカン トンカン

 

星の妖精たちはとても働き者。汗を流しながら曲がったレールを叩いていました。

 

すると、何処からかシクシク、シクシクと悲しむ声が聞こえてきました。

 

小さな光の玉がゆらゆらと揺れながら泣いていたのです。

 

それに気が付いた星の妖精たちはみんな手を止めると、光の玉に近づき優しく声をかけました。

 

「ねえ、どうしたの?何でないてるの」

「えーん えーん。迷子になったの。えーん、えーん」

「そっかー、行先はあっちだよ。君は何処から来たの?」

 

光の玉は惑星ジュエリをさした。

「そっか。じゃあ私が案内してあげる。おいで。」

妖精の一人は光の玉を連れて飛んでいきました。

 

次の日、星の妖精たちはジュエリの様子を見にいきました。

何千万年ぶりだったでしょうか?

上空を飛び回っていると、地上には地球のような人間や進化した二足歩行の獣、空飛ぶトカゲ、いろんな生き物が誕生していました。

 

それを見た妖精たちはとても嬉しい気持ちになりました。

 

「たくさんいるね。いろんな生き物ができたね」

と、妖精の誰かが囁きました。

「そろそろ文明が生まれるころね」

と、妖精の誰かが言いました。

「じゃあ、また奪い合ったり傷つけあったりするのかな」

また誰かが言いました。

 

妖精たちは何だか悲しい気持ちになってしまいました。

そして、夜が訪れました。

 

地上は真っ暗です。

木よりも大きなトカゲも強そうなトラもみんな怯えています。

そして命を終えた光の玉もシクシクとまた泣いていました。

 

「そうか、みんな暗闇に怯えて夜が怖いのね」

「そうか、暗くて向こうの世界に行けなくて泣いていたのね」

 

 

この惑星の子たちに必要なものを作ろうと、星の妖精たちはみんなで話し合いをしました。

  • 夜を怖くないようにする」
  • 向こうの世界への道しるべ」

 

星の妖精たちはみんな頷くと宇宙に飛び散っていきました。

 

その日から妖精たちは大忙し!

 

トントン カンカン トントン カンカン

 

手分けしての大工事が始まりました。

 

資材を運ぶもの、組み立てるもの、指示を出すもの、みんなで協力して大きな大きな工場を宇宙に建築しました。

 

工場はあっという間に完成しました。

「それじゃあ、スタート!」

「スイッチ オン!」

誰かの合図で工場は ガタゴト ガタゴト 大きな音と同時に動き出しました。

 

いくつもの歯車がまわり、ベルトコンベヤーは走り、煙突から煙があがりました。

しばらくすると、その煙突からポンっとキラキラ星が飛び出ていきました。

 

キラキラ星はゆらゆらと宇宙に浮かんでいます。

「よし!星を作る工場は成功だ!」

妖精たちは大喜びです。

 

「じゃあ、次は向こうの世界にいく目印を作ろう!」

「おう!」

 

妖精たちは一人ずつ空の小瓶を手にすると散り散りに飛んでいきました。

どうやら手分けをしていろんな惑星に向かったようです。

 

妖精たちは小瓶に光の素を集めました。

ある者は、お母さんの子守歌

ある者は、産声

そして、生き物たちの喜びと笑顔

 

ささやかな幸せから溢れる光を結晶にして持ち帰りました。

 

妖精たちはその結晶をふわふわの白い粘度に混ぜ合わせ

コネコネ コネコネ 大きく丸くしていきます。

 

またあっという間に出来ました。

幸せの結晶を含んだ大きな大きな粘度は優しくて青白い光を放ちます。

 

 

「よし!大きな月の完成だ!」

「この先が向こうの世界、もう迷はないね」

「そうだね。優しい月がいるからもう悲しくないね」

 

 

妖精たちはその夜、地上の様子を見に行きました。

 

月が地上をうっすら青白く照らしています。

その周りにキラキラと光る星が輝いています。

 

よくばりな狼も、臆病なウサギも、みんなぐっすり眠っていました。

妖精たちはそんなみんなの寝顔を見ると嬉しそうに帰っていきました。