星を飾る国chelcy 本編④

「星を飾る国 チェルシー」

ここは惑星ジュエリ。

ソロモン大陸北部に大きな権力を持つチェルシー王国があった。

小高い敷地に建つ巨大なお城はシンボルのように大きな歯車を備えていた。そしてその下には城下町が広がり、その周辺を広大な農地が囲んでいた。

 

この巨大なお城にはすっと伸びたアンテナのような塔があった。もともとは見張り台に使われていたが今の王様が気に入ったらしく自分の部屋にしてしまった。

それのだいぶ下にはなるが見晴らしのよい城壁の角に新設された見張り台で兵士が夜空を監視していた。

 

平和な一日の終わりだった。

商売を終えた商人、収獲をおえた農家、宿をとる旅人、そのみんなに今日一日の終わりを告げるように星空はキラキラと輝いていました。

 

 

退屈そうにあくびをした兵士は城下町を見降ろし街の灯りがポツポツと消え、眠りにつき始めていく様子をボーっと眺めていた。

「ご苦労さん、交代の時間だ ヴァイス。」

少し先輩の兵士が現れた。

「はい!有難うございます。異常なしであります。」

 

今夜も変わらない平和な夜と確信していた彼の目に一瞬光る物を感じた。「あれは!!」

 

黒い夜空に青白い光りの線が鋭く引かれた。

 

 

時を同じく、城の中庭の噴水に腰を下ろした老人の姿があった。

 

老人の名前はビザ、この国の大臣を務める男だった。

先代の国王から大臣として仕えるとても誠実で有能な大臣だった。

 

「ビザ様、こんばんは」

そう挨拶したのは城に使える若い侍女だった。

「おお、その声はええと、エルサかな」

「いえ、先日から雇用頂きましたモリカです。突然お声をお掛けして申し訳ございません。」

大臣のビザは少し眉を動かし、

「いやいや、わしの方こそすまなんだった。この頃は物覚えも悪くていかん。」

そう言ってビザは笑ってみせた。

 

「あら、ビザ様。眼鏡はかけていらっしゃらないのですね」

「そうなんじゃよ、困ったもんでな。今朝から眼鏡が行方不明でな。」

「ビザ様まで被害に合われるなんて。これでとうとう28?」

「いいや、26件目じゃの。また記録の更新をされてしもーたわい」

 

ここ数日、城の中では紛失事件が続いていた。

厨房の鍋、フライパン、神官の帽子、ハンカチ、万年筆、靴の片っぽ、、重要なものからそうでも無いものまで。

 

最初はうっかり失くしたものと思われていたが、こうも頻繁に起きると自然とは思えなかった。しかし、誰かを特定にして狙われた訳でもなく。それこそまだ貴重品や高級な物が盗まれた訳ではないため危険視はされていなかった。

「それにしても、ビザ様の眼鏡を狙うなんて」

「しっ!!」

モリカの話をさえぎるようにビザは人差し指を口に当てた。

 

「聞こえる。これは、落ちるか!!!伏せなさい!!」

ビザはモリカをかばう様に身を伏せた。

 

城壁で見張りをしている兵士が叫んだ

「流れ星!!落ちます!流れ星!!落ちます!!!」

 

ゴゴゴゴゴ!!!!

 

大気を突き破り風のうなり声が響いた。

「ビ、ビザ様、これは」

「これは、かなり近いぞ。皆のもの衝撃に備えろー!頭上を通るぞ!!」

 

ピカッ!眩しい閃光が頭上から降り、白い爆煙が線を引きながら追いかけた。

空気を押しのけ響かせる轟音の後、ドンッと地響きが起き地面を激しく揺らした。

 

「南南東、およそ5キロ!繰り返す!南南東、およそ5キロ!」

 

「門を開けろ!10番隊がでる!!」

城の門が開くと馬にまたがった兵隊が颯爽と駆け抜けた。

 

ビザは呟いた。

「やれやれ、老体にはちと厳しい残業になるかの」

あの距離ならそう時間は掛からんだろう、そうぼやきながらビザはもう一度噴水に腰掛け知らせを待った。

 

しばらくすると早馬を駆る兵士が戻ったとの知らせが入った。

息を切らした兵士が駆け寄りビザの前で膝をついた。

「報告致します!流れ星、無事に発見致しました。新たな星降り人でございます」

「うむ、ご苦労であった。被害状況はどうかね?」

「農家の敷地、落下地点とその周囲100mは野菜畑でございます。ケガ人はいませんでした」

「そうか、では回収も問題ないね」

「はい、回収作業も滞りございません。間もなく城に到着致します。」

ほっとしたビザは顎髭なでた。

「うむ、では卵は明日解錠するとしよう。見張りを2名立て、皆は休むが良い。ご苦労じゃった」

ビザは立ち上がり帰ろうとしたが

「お待ちください!ビザ様!」

「んん?どうしたかね」

「青色でございます!このたびの卵、青色でございます!!」

ビザのおっとりとした目は鋭くひかり、兵士を睨みつけ緊迫した空気が漂った。

「間違いないな」

「は、はい!間違いなく青でございます」

「迎えの兵を出し増員!そして届き次第すぐに玉座の間へ設置せよ。皆の者に緊急召集!緊急ランクはA!」

「はっ!招致しました!」

兵士はまた走っていった。

 

城内へと戻っていくビザの表情はとても険しかった。