Story
地球から遥か彼方の美しい資源豊かな惑星。
ドーナツのような輪っかの大陸に住む人間たちは過去に数えきれない程の争いを繰り返しいくつもの国に別れた。
そして国々は豊かさや繁栄を競い合い科学や技術を飛躍させていき、今まさに高度成長期を迎えようとしていた。
そんな大陸の中心には海に囲まれた大きな島があった。そこは資源と自然豊かな台地が広がり沢山の動物たちが活動をしていた。
過去にこの島の資源をめぐり戦争が起きたが、世界平和条約でその島は世界共通の財産として人の立ち入りを一切禁じる約束がされた。
人の手を離れたその島は動物や植物たちにとって楽園だった。
エメラルドグリーンの緑が広がる台地、その頂点に君臨するライオン。
真っ赤なルビー色の溶岩地帯、その上空を滑空する大鷲の群れ。
サファイアブルーが広がる広大な海域、波しぶきあげてジャンプをする巨大なシャチ。
強いものが弱いものを捕食する。その食物連鎖を繰り返し、動物たちは共存していた。
それからまた少し年月が経ち。
ついに人間たちは経済と科学技術のピークを迎え、まるでお祭りのように裕福さを競い合うのでした。
家と同じくらい大きな冷蔵庫、宙に浮いた車、高性能な小型パソコンに掃除機の機能を搭載。
企業もレースのように次々と新商品を生み出し、消費者は我先にと買いあさり自慢と見せびらかしを繰り返していました。
そんなある日、国々の王様たちは同じ悩みを抱えるようになりました。
国民たちが多くのゴミを出すようになり、もう捨てる土地が無くなってしまったのです。
王様たちは集まって会議を開きました。
話題はどの王様もゴミ問題でした。
「あの冷蔵庫はオマエの国のメーカーだ。回収しろ!!」
「それなら!あの役に立たない車はそっちの国だ!」
王様たちは互いに怒鳴り、貶しあい、さらには殴り合いの乱闘騒ぎになりました。
すると、そこに黒い影が現れました。
幽霊のような黒い影は小さな男の子のようなシルエットをしていて、目玉は禍々しい紫色に鈍く光っていました。
そして大人たちの喧嘩をあざ笑うようにお腹をおさえてケタケタと笑いだしたのです。
王様たちはみな手を止め、その黒い影に注目し
「なんだオマエは!?」
どこかの王様が声を発しました。
「愚かなオマエ達に1つ妙案をプレゼントしよう。」
「なんだと!」
「いいか、よく聞け。・・・・・・」
話終えると黒い影はスーッと姿を消してしまいました。
そして、しばらくすると会議が終わり王様たちは自分たちの国へそれぞれと帰っていきました。
次の日、全ての国々から毎日荷物を運ぶ為の大きな船や飛行機が出港しました。
荷物の中身は全て山盛りのガレキでした。
そして船や飛行機の行先はみな大陸の中心へと向かっていたのでした。
世界中の人間は今まで戦争や争い事になってきた真ん中の島を共同のゴミ捨て場にする事にしました。
全ての国がいつでも、好きなだけ自由にゴミを捨てる場所としてこの島を選んだのでした。
やがて、、、
島の台地はガレキの山が覆い
上空から投げ捨てられたガレキは溶岩に溶け異臭や煙を放ち
島の海域は魚の住かを失い、海はドロドロとした灰色に変わりました。
何千年、何万年という永い時を経て作り出された自然豊かな美しい島は数週間という短い期間で変貌しました。
島に生息していた動物たちはガレキの下敷きになったり、毒に侵されたり、食べ物を失ったりと絶滅を向かえるのにそう長くはかかりませんでした。
動物たちは自分たちの身に起きた事が理解できません。
ただ朽ちていく仲間や失われていく獲物たち、弱り腐っていく我が身を見守り続ける事しかできませんでした。
そして、全ての命が消え去った死の台地を一頭のライオンが全てを見届け終えたようにガレキの上へと横たわり静かに息を引き取とりました。
彼らの悲痛な叫びと悲しみの涙を流すように激しい雨が降りました。
その雨は動物たちの苦しみを洗うように地中へ流れていきました。
それから数年後。
島はガレキと臭気、光を遮断するスモッグに包まれていた。そして、今でも上空からガレキが落とされる日は続いていた。
そんなある日のこと。
ガレキをかき分ける音が聞こえてきました。
あちこちでガタゴトと音をたて次々と地上に姿を現しはじめました。
それは新しい生命体、機械の体をしたあの動物たちでした。
年月をかけ、島に降る雨が動物たちの意志やガレキの成分を含み地中に流れました。
そして、地中に眠る鉱石がそれを吸収したのです。
動物の意志を持った鉱石たちは命が吹き込まれたように地上を求め動き出し、ガレキの中から金属や機械を取り込んでより大きく強く成長していきました。
やがて鉱石の心臓を持つロボットとなり、地上へと現れた彼らはこの島でまた新たな活動を始めていきます。
弱者は転がるガレキを食料に、強者はその弱者を食料に、まるで前世の記憶を辿るようでした。
つづく
物語について
ロボットたちの心臓は本能のままに動く者と機械のゴミに混ざったパソコンなどのメモリーを吸収し知恵を得た者と別れていきます。
そして争いながら彼らは時短くまた絶滅してしまいます。
この物語のタイトルは「核心」
鉱石の心臓で動くロボット達のお話でもあり、本編「星を飾る国chelcy」の核になるお話です。
核心 coreは心臓部やお話の核を指し示しています。
chelcy作品のアクセサリー、核心シリーズはこのロボットたちの心臓部をイメージした作品です。
物語と合わせて楽しんで頂けると幸いです。
またこの物語の続きもいつか・・・。